April 29, 2026
その25「装幀の神」

「装幀(そうてい)の神」と私が勝手にそう呼んでいた偉大なデザイナー祖父江慎さんがお亡くなりになりました。以前ブログ(ブログその15「大切なこと」リンク)に書いたのですが私が密かに尊敬していた方です。

(↑2024年5月に銀座の書店で行われたイベントに飾られていた祖父江さんのコメント)
大のかまってちゃんファンでの子さんの配信にもちょこちょこコメントされていたのでご存じの方も多いかと思います。真っ赤なアイコンで「あ!祖父江さん来た!」ってすぐ分かる感じでした。私が祖父江さんを知ったのはかまってちゃんを知るよりも遥か昔で実家の父のアトリエの本棚に置かれていたデザインの本からでした。私の未来を決めた本です。

↑デザインの現場(美術出版社)
こんな世界があるんだ。いつも当たり前に目にしている本や広告やパッケージ、何でもないただの紙に魂を宿す仕事。祖父江さんのされていた装幀とは本のデザインの事です。祖父江さんはそれまでの常識を膨大な書体知識と印刷知識と本に対する愛情によってぶち壊した人です。この本に祖父江さんの子供時代のエピソードが書かれていたのですが『(好きな本の)好きな部分だけ切り取ってホッチキスで止めて、オフダのように持ち歩いて、暇なときに読んでいた…』そうです。なんたるリリック。取材者さんの『当時の祖父江少年が、祖父江さんのデザインした本を買って、切り刻んでしまったらどうするんだろう』という問いかけに『どこを刻んでも大丈夫なようにつくってありますから平気』と祖父江さんは返答しています。これを愛と言わずしてなんというのか。そんな愛に溢れた祖父江さんのデザインした本。私の本棚にも1冊読むためではなく見るために置かれています。

↑トーベヤンソン・人形の家(筑摩書房)
そんな祖父江さん、実は私の美術系を閲覧する用の完全趣味のインスタアカウントをフォローしてくださっていました…。自撮りやくだらない日常写真をアップしていたりもしていたのですが…お恥ずかしい。フォロワー数名しかいない私の唯一の相互フォローでした。自慢です。祖父江さんの訃報を知ったのはおととい4月27日、かまってちゃんの水戸のライブに行く為に取ったホテルにチェックインした直後でした。虫の知らせだったのかな…その日まで行く気無かったんです。色々あってしばらくファン活動しないでおこうと思っていたので…。27日の朝ちょうど仕事がオフになって2日休みで「あ、明日水戸でライブある。水戸くらいまでなら行けるかな」って思って急遽チケット取ってホテルを予約したんです。ホントたまたまでした。ネット新聞の記事を読んで3月15日に亡くなられていたのを知ってホテルのベッドで嗚咽しました。そこまで深く交流していた訳では無いのですがやはりどこか心の奥で支えにしていた存在だったんですよね…。返ってくるはずはないのですが感謝のDMを送らせて頂きました。水戸のライブは祖父江さんと一緒に見ているつもりで参戦しました。やはりお別れは悲しいものです。祖父江さんありがとうございます本当に。祖父江さんやの子さんを見ていると何者にもなれていない自分に焦りを感じてしまう時があります。強烈な個性を目の前にすると呑まれてしまうんですよね、自分はなんてつまらない人間なんだろうって。そんな事もあり自分と自分の作品に向き合う時間が必要かなって。だからまたちょっと離れます。そして自分を取り戻せたらまた戻って来ようと思います。それまでしばしのお別れです。それでは、またいつか。
↑画像内の写真と文章の引用元:美術出版社:1997年「デザインの現場:本づくりと紙」の祖父江さん紹介文より


